〜医療コラム〜横浜の地域医療を守る

ケース01:小児科・腸重積症 先入観を排し予測することの大切さを実感

2024/05/01

ケース01:小児科・腸重積症
先入観を排し予測することの大切さを実感 

《 ワンポイントメモ 》
腸重積症:腸の一部が隣の腸に入り込んでしまう病気です
特徴:
・腹痛、嘔吐
・急に号泣してはまた落ち着く
・生後半年から2歳前後に多い病気です

このコラムページには私の研修医時代からこれまでの印象に残った症例や種々の疾患について分かりやすく少しずつ連載していこうと思います。

1回目は研修医2年目に経験したある病院での夜間当直でのお話です。

夜中に当直室の電話が鳴り1歳の男児が嘔吐で来院していると。
お母さんに聞いてみると、数日前に風邪を引いて治療を受けていたとのこと。
冬でもあったしウイルス性の嘔吐だろうと思いつつ診察開始。
最初は患児の表情に問題はなかったのですが、急に号泣してはまた落ち着く(間欠的啼泣)状態が何度かみられその度に嘔吐する症状が見られました。
これは尋常的な泣き方ではないなと思いつつ、腹部の触診をしたところ右中~下腹部にかけて空虚に感じる部分が。

脳裏にまさかと思われる疾患が浮かび、即エコー検査をしたところ、教科書で見たことのある特徴的なサインが!
これは腸重積の可能性が高いと考え、浣腸施行したところやはり粘血便。
すぐに小児外科のDr.を呼び一緒に治療を兼ねた注腸造影、高圧浣腸を開始。
(造影剤を入れた浣腸をしながらレントゲンモニターを見ていると、大腸に入り込んだ小腸の重積部分が徐々に整復されて元通りに!)
その後は絶食の上、経過観察のために入院となりました。

小児外科のDr.から「よく研修医で見つけられたね。
遅れていたら腸の壊死で切除の可能性や命に関わる事態になっていたからねと。」
初めてのお子さまで、不安そうにされていたお母さんと一緒に喜び、ホッと胸を撫で下ろした忘れることのできない初めて経験した小児腸重積の症例でした。

小児腸重積とは2歳くらいまでの乳幼児の子供さんで腸が腸の中に入り込んだ結果、腸が閉塞し腹痛や 嘔吐、時に血便が見られる疾患です。
特に小腸が大腸内に入り込んでいることが多く、
放っておいたら腸の血流障害と腸浮腫で壊死状態となる早期発見が大切な病気です。
ほとんどの例で原因不明ですが、上記の症状の出る前かその時に風邪をひいている事があります。
それだけにウイルス性の胃腸炎と診断されていることがあるので注意が必要です。
特徴は泣いては落ち着く泣いては落ち着くといった、周期的な啼泣(間欠的啼泣)です。
再発がみられることがあるので注意が必要です。

私はこれをきっかけに気を付けている事があります。
先入観は止め、様々な状態を予測して診療に望むべきと。
ただ、よくあるメジャーな疾患からまず考えて、まれな疾患はその次に考えることを心がけるようにしています。